いらっしゃいませ

夏石鈴子さんの文庫本「いらっしゃいませ」を読んだ。
大手出版社の受付に採用された鈴木みのりがいろんな体験をしていく話。
社会に出た学生が最初に感じる戸惑いとか失望とかが特異な文体で語られて
すごく面白かった。

いらっしゃいませ いらっしゃいませ
夏石 鈴子 (2006/03)
角川書店

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受付にいる同僚がそれぞれに個性が強いので、その人たちとの会話や振る舞いを読むと
その人物像がくっきりと浮かんでくる。
彼女たちの会話がホントに面白くて可笑しいのでつい笑ってしまう。

みのりの描く人物像はユニーク。
掃除をしてる若いお兄ちゃんが佐藤浩市に似てるので、
受付に座りながらずっと見てるのが楽しみなのだ・・
首が太いのと唇の厚さがそう思わせるのだそう。

他にも・・吉祥天立像、鬼奴、こけしなどに登場人物を見立てている。

あと書きを書いてるのが同じ時期にこの出版社に入ったという白石一文さんで、
白石さんは夏石さんの小説化としての才能に嫉妬(?)するくらいベタ褒めで、最初の作品でもうノックアウトされたらしい。
それが処女小説の「バイブを買いに」というタイトルの作品で、
このタイトルからしてユニークですよね。
白石さんが引用している別の作品「愛情日誌」の中の一説がドクンと・・私の心にも響きました。

【子供だった頃は親にあれこれ言われて、叱られて言うことを聞いてきた。学校に入れば今度は先生にあれこれ言われて勉強もした。学校を出て大人になれば男のいる世界で、仕事もして男の気を引くように化粧や髪や服に気を配りそれでしっかり掴まえた。
結婚していなければ「なんで結婚しないの?」と言われ、結婚すれば「子供は?」と言われ、赤ん坊を連れていると「二人目は?」と言われる。二人子供を連れているともう何も言われない。
多分人生の中で他人からあれこれ言われない時期は今なのだ。全然関係ない他人から面倒な一言を掛けられなくなるにはこれだけの要素がないと駄目なのだ。
あれこれ言われずに済む、やっと素の自分に戻って一から好きなようにやれると思ってみれば、自分は当然「若い女の子」ではなく「あれっ」と思うような「老けたこけし顔」になってる・・】


白石さんはこの文章が今まで謎だった女性の「大変さ」を教えてくれると書いています。
他にも目からウロコのユニークな文章があちこちにあって楽しくてやめられない作家さんです。



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